アンディン宮殿 建築作品の傑作

アンディン宮殿 建築作品の傑作

アンクー川(フエ市)のほとりに静かに佇むアンディン宮殿は文化交流の歴史的証人であるだけでなく、阮朝末期に王族が居住した場所でもあります。この宮殿は、アジアヨーロッパ建築様式の真髄とインドシナ建築の繊細なラインが見事に融合した、阮朝の最も独特な建築作品の一つです。


上空から眺めたアンディン宮殿の全景。



 

アンディン宮殿は1917年、カイ・ディン帝の治世下、ヴィン・トゥイ皇子(後のバオ・ダイ帝)とナム・フオン皇后の住居として建設が開始されました。この建物はフエ王城の中心から南へ約3km、アンクー川のほとりという絶好の場所に位置し、静かで開放感あふれる空間となっています。

 

アンディン宮殿の特徴は、東洋建築と西洋建築の調和です。この建物全体はインドシナ様式(20世紀初頭にインドシナで初めて出現した独自な建築様式)で設計されています。 宮殿は3階建てで、総建築面積は最大745平方メートルにおよびます。


 


 

宮殿の1階は、花崗岩の柱、広々とした回廊、高いアーチなど、ヨーロッパ様式で設計されています。 特に、浮き彫りや模様などの装飾的なディテールには、西洋美術の影響が色濃く表れています。一方、2階と3階は曲線を描く瓦屋根、様式化された瓦屋根、そして伝統的な装飾模様など、東アジア建築の影響を強く受けています。

 

アンディン宮殿の内部は、現代装飾芸術の小さな美術館のような存在です。各部屋の天井や壁には、宮廷生活やベトナムの自然風景を描いた精緻なフレスコ画が飾られています。また、当時の著名な美術家であるレ・ヴァン・ミエンやファム・ヴァン・ドンの貴重な絵画も多数収蔵されています。


アンディン宮殿1階の最も大きな部屋。


 

アンディン宮殿の庭園はなめらかな緑の芝生、丁寧に手入れされた花壇、そして花崗岩で舗装された小道など、フランス式庭園のスタイルで設計されています。 庭園のハイライトは洗練された装飾が施された噴水のある人工池で、庭全体に生き生きとした、そしてロマンティックな雰囲気を演出しています。

 

歴史の浮き沈みを通して、アンディン宮殿は阮朝の数々の重要な出来事を目撃してきました。この宮殿は、バオ・ダイ帝が幼少期を過ごし、後にはナム・フオン皇后とその子どもたちが暮らす居所となりました。 特に、阮朝末期には多くの重要な外交活動の舞台ともなった場所でもあります。


 


現在、アンディン宮殿は修復・保存され、フエの文化遺産を探訪する旅の魅力的な観光地となっています。ここを訪れる人々は、この比類なき建築の傑作を鑑賞できるだけでなく、20世紀初頭のベトナムにおける東西文化の移行期について学ぶ機会も得られます。


およそ100年の歴史を持ち、20世紀初頭のベトナムにおける伝統美術から新美術への移行期に生まれた、独創的なアンディン宮殿の壁画。

アンディン宮殿はその優れた芸術的および歴史的価値から、ベトナムにおけるインドシナ建築の代表的な建造物の一つにふさわしい存在です。この建物は、東西文化交流の証としてだけでなく、今日に至るまで守り受け継ぐべき貴重な遺産でもあります。


文、撮影:コン・ダット


 


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